房総から新種のノリを発見!

房総から新種のノリを発見!

概要

 乾海苔の原料となる紅藻アマノリ類(ウシケノリ目ウシケノリ科の葉状の体を持つ仲間)は、日本から29種が知られていますが、2002~2019年にかけて、千葉県太平洋沿岸の勝浦市~銚子市および山口県下関市で採集されたノリが、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産大学校の阿部真比古准教授らと海の博物館の菊地則雄主任上席研究員との共同研究によって、アマノリ類の一属オニアマノリ属に属する新種と確認され、学名は Neoporphyra kitoi、和名はセンジュアマノリと名付けられました。この結果は、2021年7月15日付の日本藻類学会英文誌 Phycological Research オンライン版で公開されました。

センジュアマノリ発見の経緯

 海の博物館では、開館以来、房総の海藻の多様性を明らかにする目的で、県内各地で調査・収集を行っています。その一環として、2002年と2004年にそれぞれ大原町(現いすみ市)と銚子市で採集されたノリを、形態的な特徴からウップルイノリ Pyropia pseuidolinearis と同定し、糸状体培養株を作出して、保存培養していました。

 一方、国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校では、2012年に、養殖に用いる新たなノリの探索のための調査を山口県下関市で行い、そこで採集したウップルイノリ類似のノリを培養したところ、独特の生長過程を持つことが明らかになりました。阿部准教授からこのノリについての見解を求められた菊地が、このようなノリはこれまで確認されていないので新種の可能性が高いことを説明し、阿部・菊地による共同研究が開始されました。そして、下関市で発見されたノリと大原町及び銚子市で採集されたノリのDNA解析を行ったところ、これらは同じ種であり、かつ新種であることが判明しました。

センジュアマノリの特徴

 センジュアマノリの最も大きな特徴は、その体形成過程にあります。このノリを培養して、葉状体(乾海苔として食用とされる葉っぱ状の体)の成長を調べたところ、まず1枚の葉状体が形成され、その後、葉状体の根元にあって基質に付着するための仮根を持つ「根様糸細胞」から、新たな葉状部を発出し、良く成長したものでは、10枚程度の葉状部を持つ体となりました(写真右の標本のような体)。このような体形成過程を持つノリはこれまで知られていません。

 また、DNA解析結果からは、このノリはアマノリ類の一属であるオニアマノリ属 Neoporphyra に属することがわかりましたが、これまで確認されている種とは異なることがわかりました。これらの特徴から、センジュアマノリはオニアマノリ属の新種であると結論付けられました。

 なお、和名の「センジュアマノリ」(千手甘海苔)の由来は、根元から葉状部を多数発出した体の様子が、さながら体からたくさんの手が出ているように見えることから命名されました。

 

論文タイトル

Abe, M., Kikuchi, N., Tamaki, M. Sato, T., Fujiyoshi, E. and Kobayashi, M. 2021. Neoporphyra kitoi sp. nov. (Bangiales, Rhodophyta) from Japan, with new blades arising from rhizoidal cells

(根様糸細胞から新たな葉状部を発出する特徴を持つ日本産紅藻ウシケノリ目の新種センジュアマノリ)

論文著者

阿部真比古(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)

菊地 則雄(千葉県立中央博物館分館海の博物館)

玉城 泉也(国立研究開発法人水産研究・教育機構 本部)

佐藤 朋子(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)

村瀬 昇  (国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)

藤吉 栄次(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所)

小林 正裕(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所)

掲載誌

Phycological Research(電子版)2021年7月15日付 doi: 10.1111/pre.12464

senjuamanori20210817

      写真左:センジュアマノリ(矢印)が生えている様子(千葉県いすみ市)

       写真右:センジュアマノリの標本(海の博物館所蔵 CMNH-BA-8029)
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