企画展担当学芸員のオススメ<その5>
今回ご紹介するのは、特に人気のある「金茶八橋織綾地蝙蝠模様友禅染小袖」です。鬱金色の着物地の衿先から褄先にかけて黒と青のコウモリが友禅染で染め上げられています。このコウモリ、それぞれ表情が違い、金や青の糸で縁取られたり、目の部分のみ刺繍されたりもしています。
現在、コウモリと言うとドラキュラやハロウィンなど西洋から伝わったイメージから不気味な存在と思われがちです。しかし、中国ではコウモリの漢字表記「蝙蝠」の「蝠」と「福」の音が同じことから、おめでたい生き物と考えられています。日本でも江戸時代以降コウモリ模様が流行したようです。今でもラーメンどんぶりなどに時々コウモリが描かれているものを見かけます。
話は戻りますがこの小袖、袖口の内側にもコウモリ模様が染められています。女性が腕を動かすたびにコウモリがチラチラと姿を現します。江戸時代人の美意識の高さを感じさせる資料です。
国立歴史民族博物館 蔵
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