春の展示 九十九里浜の自然誌

春の展示
九十九里浜の自然誌

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開催期間 令和3年3月23日(土)~令和3年5月30日(日)
休館日  毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
会場   千葉県立中央博物館 企画展示室

 


 

 房総半島の東岸に、約60kmにわたって続く九十九里浜があることを、県民でなくともご存知の方は多いのではないでしょうか。海水浴や観光に行ったことがある方も少なからずおられると思います。ところが、その九十九里浜に様々な生き物がいることや砂浜ならではの不思議な景色が見られることは、あまり知られていないのではないでしょうか?
 本展示では、九十九里浜の自然と魅力について標本や剥製、写真を使って様々な角度からご紹介します。

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九十九里浜の地史と地形

 九十九里浜は、九十九里平野の東端にあり、北の刑部岬から南の太東埼まで、途切れることなく連続する砂浜です。ただ、昔から今の姿をとどめていたわけではありません。約7000年前は、海面は今よりも2~3m高く、海岸は今より10kmほど内陸にあり、九十九里平野全体が海でした。その後、海面が徐々に下がり、それにともなって現在のような砂浜がつくられてきました。
 九十九里平野の陸地を掘ると、砂の層が地下深くまで続きます。しかも、地下の深いところからも、昔は海であったことを示す貝等の海の生き物の化石が出てきます。

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 九十九里平野の地下から掘り出された資料(ボーリング・コア:撮影、小松原純子氏)。
 右ほど、深い(古い)層です。砂浜を特徴づける縞模様や貝化石などが見られます。

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砂浜に現れる2つの縞模様。
左:風で砂が動くと、砂浜には風紋と呼ばれる縞模様ができます。
右:砂浜を掘ると、断面に縞模様が現れます。寄せ波と返し波でできます。砂鉄を多く含む層は黒くなります。

 砂浜は、砂でできていて、しかも植物があまり生えていないために、波や風の力で地形は比較的容易に変わります。波や風は砂を、時には削ったり、時には集めたりして、独特の景観を作り出します。砂浜の内陸側の方には、たいてい砂丘がありますが、これらの砂丘は、主に植物と風が作り出したものです。

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 例えばコウボウムギのような植物が砂浜に生えて葉を広げると、風の邪魔になるために、砂が植物のまわりにたまり始め、埋もれます。砂浜の植物は、埋もれると、砂の中から伸びあがってまた葉を広げます。葉を広げるとまた砂がたまり埋もれます。埋もれては伸びあがることを繰り返しながら砂丘は発達します。

 

九十九里浜の植物

 砂浜では、塩分を含んだ潮風が吹きつけ、風で吹き上げられた砂が、たたきつけるように飛んできます。砂には、栄養はほとんどありません。そのような厳しい環境のなかで生きられる植物は非常に限られます。

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 砂浜に限らず、海岸では塩分を含んだ潮風が吹きます。枯れているのはセイタカアワダチソウ。普段は内陸に生えるセイタカアワダチソウが潮風をあびると、枯れてしまいます。

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 砂浜に、このように空のガラス瓶を立てておいて、しばらくすると、ガラスに砂粒があたり、すりガラスのようになります。

 九十九里浜の砂丘には、植物が10種くらい生えています。いずれも内陸には生えていない、砂浜でしか見ることができない植物です。

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ハマヒルガオ
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コウボウムギ

 ただ、最近は外来の植物も入り込んでいます。また、侵食や堤防建設、松の植栽等により、砂浜の植物が生育できる範囲が狭まっています。

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アツバキミガヨラン(外来種)
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オニハマダイコン(外来種)

 今回の展示では、75年前に行われた、九十九里浜北部での植生調査の報告書やその時に採取された植物標本も展示します。

 

九十九里浜の動物

 単調に見える九十九里浜の砂浜もよく見ると、変化に富んでいます。陸側から海に向かえば、松林、砂丘、乾いた砂、波打ち際、浅い海そして深い沖と続きます。砂浜に沿って行くと、時々海に流れ込む川があり、その河口に出会います。河口では、真水と海水が混じっています。様々な環境のなかで、いろいろな動物が暮らしていますが、遮るものがない砂浜では、砂にもぐったり、空を飛んでいたり、夜に活動したりと、なかなか身近で見ることができません。
 本展示では、九十九里浜の動物達を、剥製や標本、写真のほか、珍しい動画でも見ることができます。

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ミユビシギの群れ
fig.14
ミヤコドリ
fig.15
スナガニ
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ヒラツメガニ
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フジノハナガイ
fig.18
チョウセンハマグリ
fig.19
エボシガイ
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ヒメスナホリムシ
fig.21
ヒラメ
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打ちあがって干からびたマイワシ

 

九十九里浜の恵み

 人は九十九里浜の海から、たくさんの恵みを得てきました。昔から、いわし漁が有名ですが、単に食べるためにだけ獲っていたわけではありません。江戸の頃は、綿栽培の肥料として重宝され、九十九里浜で獲れたいわしは、広く運ばれていました。
 九十九里浜の代表的な貝と言えば、はまぐりですが、はまぐり以外にもながらみ等のおいしい貝類がとれます。

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ゆでたながらみ
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いわしの丸干し

 九十九里浜は、広い砂浜での海水浴も有名ですが、最近では、サーフィンに来られる方も多くなっています。東京オリンピックのサーフィン会場も九十九里浜にあります。

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波に乗るサーファー

 

九十九里浜の「()え」

 九十九里浜で、蜃気楼(しんきろう)が見られると聞くと驚かれる方もいるかもしれません。気象条件がそろうと、遠くの景色が伸びたり縮んだり、時には反転したりします。九十九里浜は、日の出で有名ですが、その日の出の太陽がだるまのようになったり、四角くなったりもします。まさに「()え」る珍しい景色がときおり現れます。

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九十九里浜の蜃気楼。だるま太陽(左)とひっくり返った船(右)。

 

昭和の九十九里浜

 故・林辰雄氏により主に昭和30から40年代に撮影された、九十九里浜へ海水浴等に来た観光客や漁業に励む漁民の姿を、なつかしいモノクロ写真で紹介します。

 

浜で拾いました

 九十九里浜を歩いていると、いろいろなものが落ちています。遠く南国から流れ着いたものもあれば、産み落とされたり、内陸から持ち込まれたものもあります。中には何これ?と首を傾げたくなるものもあります。浜で拾った様々な落とし物を展示します。

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左:ヤシの実(上)とゴバンノアシ(下の2つ)いずれも南国からの漂着物。長い海での旅だったことを物語るように、ヤシの実には、エボシガイの仲間が付着している。
右:ツメタガイの卵塊。「砂茶碗」と呼ばれている。

 

昭和の九十九里浜

 故・林辰雄氏により主に昭和30から40年代に撮影された、九十九里浜へ海水浴等に来た観光客や漁業に励む漁民の姿を、なつかしいモノクロ写真で紹介します。

 

狭まる九十九里浜

 現在九十九里浜では、侵食が続いていて、砂浜が年々狭まっています。県では、様々な対策を施していますが、完全に止めるところにまでは至っていません。侵食を放置すると、砂浜がなくなってしまうと思われているかもしれませんが、自然の砂浜は、侵食されても簡単にはなくなりません。なぜそうなのか、パネルなどで解説します。

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関連行事

■春の展示関連行事 シンポジウム「九十九里浜の侵食を考える」(千葉県立中央図書館との合同事業)

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県の九十九里浜侵食対策検討会議の委員を務められている、(一財)土木研究センターなぎさ総合研究所長宇多高明先生をお呼びして、現在も侵食が続いている九十九里浜について考えます。

※本シンポジウムは、令和3年春の展示「九十九里浜の自然誌」関連行事として中央博物館講堂において開催を予定していましたが、新型コロナウィルス感染症拡大防止の見地から、収録映像をオンライン公開するものです。

 

協 力
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