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《追想》 斬新な意匠を誇る佐治の作品群においても、最も革新的な作品である。これ以前の作品は、例えば《螺鈿からたち香盒》や《肉合研出宇豆良水指》などでは、写実を土台に、動植物のモチーフと装飾文様とを組み合わせた作風を示していた。しかし《追想》において佐治は、色漆という技法と自己のデザインの才との親和性を高める方向へ舵を切る。大胆に形象化された大小様々なモチーフは、色彩の魅力を一層引き立て、鮮やかな色漆は背景の黒漆と美しい対比を見せながら、トンボ、トリなどのモチーフを輝かせている。 |
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《新宿駅東口モザイク壁画》 昭和39(1964)年に竣工される。今年7月下旬に新宿ルミネエストに取材に伺った際、「57年後の今、再び東京オリンピックの最中に取材された事は不思議な縁」と総務部長は語られた。 新宿駅東口地下の連絡通路にこの壁画はある。すぐ脇の短い階段を上がればロータリーがあり、カメラ店やデパートが立ち並ぶ。 |
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《爽》 翼を広げて飛んでいる白鷺のように優雅な花、サギ草と、細身のトンボをモチーフとしている。サギ草には、銀粉を蒔絵として用いている。 |
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《宴》 モチーフとなったカラタチは、大きいもので3cmにもなるというトゲと3枚ずつ一緒に生えている葉を持つ。葉と枝の付け根には翼(よく)と呼ばれる部分がある。花は5弁。これらの特徴をよく掴み、図案化している。花は螺鈿によるが、蕾や開ききってない花の形を細かい作業でよく表現している。因みにアゲハ蝶の幼虫は、カラタチの葉を好むので、このような風景は実在するであろう。蝶は蒔絵に黄色い色漆を用いて表現し、枝は銀粉にグレーの漆を用いている。直径58cmの大きな盆いっぱいに描かれている宴の情景は、圧巻である。 |
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《しじま》 鳥の首や頭には、卵殻と言って鶏やうずらの殻を酢につけて白くしたものを用いている。近づいてよく見ると、その卵殻がジグゾーパズルのようにピタッと配置されて一分の隙もない。 また、目からくちばしにかけてはスズの板を使った平文で鋭さを出している。 背景は月と草むらと海か水平線が、ブルーの漆と銀の輪郭線が清涼感を漂わせている。
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《翅》 鷹の翼は、他には見受けられない密なきらめきを見せているが、これは金平目(金、銀の丸粉をつぶして得られる特別な粉)による。月はスズの厚い板を貼り付けた平文という技法による。 背景の縦線に沿って蒔絵が施された様子はオーロラのようで、鷹が悠々と夜空を進んでいく感じを出す効果をあげている。 画像では分かりにくいが背景にたくさんある小枝に貼り付けられた青やピンクの粒子が人の動きに合わせてきらめくさまは、幻想的であり、昔話の一場面を思わせる。
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《神炎》 佐治の故郷、岐阜の鵜飼いをモチーフとした作品。作者が幼い頃、眼にした鵜飼の光景は、子ども心にも神秘的で神聖な神の業(なりわい)として感じられたという。 |
漆芸家 佐治賢使展 展示作品詳細
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