企画展担当学芸員のオススメ

企画展担当学芸員のオススメ<その3>

 万祝を注文する時に、図柄の参考とするものが雛形本です。万祝の雛形本は3点展示しましたが、そのうちの1点、明治26年(1893)に刊行された『万祝模様雛形』が、今回のオススメです。

 万祝の図柄には、鶴亀、松竹梅、しめ縄など、おめでたい模様のほか、漁の対象となる魚や漁法を描いたもの、浦島太郎、酒呑(しゅてん)童子(どうじ)などの物語を描いたものなど様々あります。その中で『万祝模様雛形』には、ちょっと変わった題材の図柄がありましたので、ご紹介します

 写真に示したものがそれで、展示でのキャプションは「お大尽(だいじん)」としました。幇間(ほうかん)(太鼓持ち)を先頭に、お大尽、禿(かむろ)大夫(たゆう)と続きます。後ろに見える桜から季節は春、行灯(あんどん)提灯(ちょうちん)から夜の情景と思われます。お大尽とは金銭を湯水のように使って遊ぶ金持ちのことで、このお大尽、当時流行のきもの姿に(やま)高帽(たかぼう)、右手にはステッキ、革靴を履いています。左手には大金が入ったバッグを持っています。これから豪遊するところでしょうか?

 明治時代には描かれたようなお大尽が数多くいたようです。中には大漁に沸いた網元や船主もいたことでしょう。ただ残念なことに、この図柄の万祝をまだ見たことがありません。一度見てみたいものですが…。
 

         館山市立博物館 蔵

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