市民研究員から博士誕生!

 
 坂田歩美さんは、平成20年度に中央博物館の市民研究員となり、翌々年からは中央博物館の共同研究員として、地衣類(菌類と藻類の共生生物)を研究しています。このたび、秋田県立大学大学院より博士(生物資源科学)の学位が授与されました。 
学位記を持つ坂田さん(中央博物館の研究室にて)

 【坂田さんへインタビュー】
Q大学では昆虫の繭や藍染めのUVカット機能について研究をされていたそうですが、まったく専門分野が違う地衣類を研究するきっかけは何だったのでしょうか?
 元々自然が大好きで、トレッキングによく出かけていました。ある時、森の中で木の枝についた地衣類を見つけました。すごくきれいだったので、地衣類をもっと知りたくなってインターネットで検索していたら、日本地衣学会の一般向け観察会が銚子で開催されることを見つけ、参加しました。その時、中央博物館で地衣類分類講座があることを知り、受講しました。そこで、すっかり地衣類の虜になってしまったんです(笑)。その後、中央博物館の市民研究員の制度を知り、本格的に地衣類の研究を始めました。
(中央博物館では社会教育施設として、市民研究員を募集しています。くわしくは市民研究員募集のページをご覧ください。)

Q学位論文の内容を教えてください。
 学位論文の論題は「日本産リトマスゴケ科地衣類の分類学的研究ー樹皮着生および岩上生種ー」です。 
 リトマスゴケは、かつては毛糸を青く染める染料として使われていた地衣類です。その名の通り、リトマス試験紙は リトマスゴケから得られる染料を紙にしみ込ませたものです。 
 リトマスゴケそのものは日本に分布しませんが、リトマスゴケ科の仲間は日本でも多く見られます。私が研究を始める前は、日本のリトマスゴケ科の仲間の分類はよくわかっていませんでした。私の研究では、胞子を生産する子器(しき)と呼ばれる皿状の器官の形態を詳細に観察し、10属23種を確認することができました。このうち2種は新種でした。その一つ、ヒメカシゴケは富津市と白井市、さらに伊豆で採集されました。また、もう一つの新種、アシカゴケは銚子の海岸で発見されました。

Q: 研究の楽しい点や難しかった点は?
 組織の様子がよくわかる解剖図を作ることが大変でした。最初は慣れなくて、かなり苦労しましたが、工夫して納得のいく解剖図ができた時はとてもうれしかったです。


坂田さんが発見した新種の地衣類(和名と学名)のタイプ標本

左:アシカゴケ Graphidastara japonica A. Sakata & H. Harada
右:ヒメカシゴケ Cresponea japonica A. Sakata & H. Harada

注:A. Sakata & H. Haradaは、学名の命名者を表しています。(A. Sakata:坂田歩美、H. Harada:原田浩;中央博物館植物学研究科主任上席研究員)

ヒメカシゴケ ヒメカシゴケ 
 Cresponea japonicaの拡大写真

坂田さんが発表した主な論文
1) Taxonomic study on the lichen family Roccellaceae (lichenized Ascomycota, Arthoniales) of Japan (2). Graphidastra japonica. Sakata A., Harada H., Hara K. & Yamamoto Y. 2014. Lichenology 12(2): 51-60.
2) Taxonomic study on the lichen family Roccellaceae (lichenized Ascomycota, Arthoniales) of Japan (3). Corticolous species of Enterographa. Sakata A., Harada H., Yamamoto Y., Hara K. 2014. Lichenology 12(1): 1-30.
3) 日本産カシゴケ属地衣類の分類学的検討. 坂田歩美・原田浩・佐藤大樹. 2009. Lichenology 8(2): 91-115

【問合せ先】
千葉県立中央博物館 企画調整課
Tel: 043-265-3111, Fax: 043-266-2481