過去の収蔵資料展

 

平成15年度収蔵資料展


イッカク 長い牙を持つクジラ

開催期間:平成15年1月11日(土)~2月16日(日)

イッカク 長い牙を持つクジラ

イッカクという動物をご存じですか? クジラの一種であるイッカクは、さまざまな種類がいるクジラ類の中でも一風変わった姿をしています。何といっても目を引くのはオスに見られる一本の長い「角」です。生物の造形の中でも最も不思議なものの一つといえるイッカクの「角」は、古くから人々の興味を引きつけてきました。
収蔵資料展「イッカク ―長い牙を持つクジラ―」では、海の博物館が所蔵する、学術的にも大変貴重な雌雄のイッカク全身骨格標本を公開し、さまざまな視点からイッカクについてご紹介しました。 







 

イッカクとは


■イッカクのなかまたち
  とても風変わりな姿をしているイッカクは、北極海にくらすクジラのなかまです。クジラのなかまは、大きくヒゲクジラ類とハクジラ類に分けられます。イッカクはハクジラ類のなかまで、その中でもシロイルカと近縁だと考えられています。 イッカクのなかまたち
 

■イッカクは一角(いっかく)?

 イッカク(一角)という名前の由来である長い「角」は、実は角ではなく牙なのです。一角には一見歯がないように見えますが、上あごに埋もれている2本の歯があります。オスではそのうち左の1本の歯だけが、左まきにねじれながら伸び続け、長さ2.5mにもなります。まれに、牙のあるメスや、牙が2本あるオスが見られることもあります。

イッカク(オス)の全身図
イッカク(オス)の全身図   イラスト:渡辺芳美
 
■イッカクのひれ
  イッカクには、他の多くのクジラ類に見られる背びれがなく、背中にわずかにふくらみがあるだけです。胸びれは小さく、先端が反り返っています。尾びれは後ろがふくらんで中心の切れこみが深い、イチョウの葉のような独特の形をしています。

【右図】
3種類のクジラの尾びれ
 3種類のクジラの尾びれ
 
■イッカクの首
  哺乳類にはふつう首の骨が7つあります。多くのハクジラのなかまではいくつかの骨がくっついているので、首を自由に動かすことはできません。しかし、イッカクの首の骨は7つに分かれたままになっており、首を動かすことができます。

【右図】
イッカクの首 7つに分かれています
 イッカクの首



 

イッカクのくらし


■氷の海にくらす

イッカクの分布図

イッカクは北極海の大西洋側を中心に分布しています。この冷たい海で、イッカクは氷とともに生活しており、氷のない夏に沿岸にやってきて、沿岸が凍りでおおわれる冬には沖に移動します。氷の近くでくらしているために、時には氷に閉じ込められて死んでしまうこともあります。

 
■イッカクの食べもの
  イッカクは魚類(タラやカレイのなかまなど)や、イカ、エビなどをおもに食べています。
【右図】
コオリダラ(左)とホッキョクダラ(右)
 コオリダラ(左)とホッキョクダラ(右)
 
■イッカクの牙の謎
 イッカクはどうしてこんな牙を持っているのでしょうか?厚い氷におおわれた北極海にくらすイッカクの生態は、近年までほとんど知られておらず、牙の役割についてはさまざまな推測がなされてきました。子どもやメスには牙がないことから、イッカクが生きていくためにどうしても必要なものとは思われません。

イッカクの牙の謎

■オス同士の闘争
 近年調査が進み、オス同士が牙を交えて争うようすが観察されるようになりました。また、成熟したオスでは、頭に傷があったり、牙が折れていることもよくあります。中には、折れた牙の破片が頭にささって残されているものもいます。このようなことから、現在では、イッカクの牙はオス同士の争いに使われていると考えられています。

 

人とのかかわり

  中世のヨーロッパでは、イッカクの牙は、想像上の動物であるユニコーン(一角獣)の角として高値で取り引きされていました。この「ユニコーンの角」は装飾品として用いられたほか、解毒作用があるとも信じられていました。
 現在でも、グリーンランドやカナダ東部ではイヌイットの人々によるイッカクの捕獲がおこなわれており、牙の他にも、肉や皮脂などが利用されています。
 ユニコーン
ユニコーン  イラスト:高橋亜紀


 

博物館の資料とは


■イッカクの標本について

 今回展示したイッカクの骨格標本は、カナダで捕獲されたイッカクを、許可を受けて正式に輸入したものです。国内では唯一、雌雄そろった完全骨格標本であり、極めて学術的価値が高いものです。

輸出許可証
輸出許可証



 
■博物館資料とは
  博物館の重要な役割の一つは、さまざまな使用を収集保存し、後世まで残し伝えていくことです。海の博物館でも、海の自然や生きものに関する標本や写真、映像を収集しています。集められた資料は整理され収蔵庫に保存されています。
 さまざまな博物館資料
         さまざまな博物館資料



 

謝辞


 このたびの収蔵資料展を開催するにあたり、諸機関ならびに多くの方々から資料の提供およびご指導・ご協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。

【協力機関(五十音順)
鴨川シーワールド、高知大学理学部、国立科学博物館、鳥羽水族館、日本鯨類研究所、平凡社

【協力者(五十音順、敬称略)】
中村 宏治、渡辺 芳美


 

アンケートの結果から

開催期間中、計246名来館者の方々にアンケートにご協力いただきました。

■アンケート回答者層
性別、年齢ともに特に大きな偏りはありませんでしたが、10代以下のお子さまの回答が多かったようです。

アンケート回答者層
住所県内居住の方が約6割でした。
これは、過去のアンケート結果とほぼ同じ割合で、
当館の来館者層を反映しているようです。
来場回数
初めて来館された方が約7割でしたが、
4回以上来館されているリピーターの方も
13%いらっしゃいました。
 
■展示内容について
 「とてもおもしろい」「おもしろい」あわせて、87%の方々におもしろいという評価をいただきました。年代別の評価でも特に大きな偏りはみられませんでした。

展示内容について

 イッカクというなじみの薄い動物を扱ったこともあってか、多少内容はわかりにくかったようです。中でも、40代の方で評価が低かったようです。

展示内容

展示内容について
 いろいろなご意見がありましたが、やはりイッカクの骨格標本や牙が好評だったようです。また、クイズ形式のワークシートもお子さまを中心に高い人気でした。
 
■いただいたご意見の一部を紹介します。

・イッカクに興味があったが、今まで具体的な展示はなかったから(20代 男性)
・つのが、ついているクジラは聞いたことがないから、きょうみをもった。(10代 男性)
・テレビなどで知っているだけでなく、自分の目で見ることができた。子どもにも教えられた。(30代 女性)
・好きな分野のものが勉強できたので。(20代 女性)
・ワークシート(クイズ)などがあり、弟がほねの数をかぞえるなどおもしろく見学できたから。(10代 男性)
・普段目にする事ができない生物に触れられたから。(30代 男性)
・一角って、ユニコーンかと思ってた。(10代 男性)
・生態から形態までイッカクの全てがわかりやすく展示してあった。(30代 女性)
・雌雄の全身骨格がすごい。何か触れるものがあると良いと思います。(20代 女性)
・普段の生活ではお目にかかれない。氷の中での生活に興味を持った。(20代 男性)
・つのが長くてかっこいい。(10代 女性)
・イッカクを取り上げているのはめずらしかった。近くでみれたし、大きさに驚いた。(30代 男性)
・完全骨格を始めてみた。西洋のユニコーン伝説に興味があった。(40代 女性)
・クイズがおもしろい!(10歳未満 男性)
・歯だったとは・・・(20代 男性)
・クイズとかがあってたのしかった(10歳未満 女性)
・こし骨が2つぽつぽつあっておもしろい。牙は、左のうわくちびるをつきでている事がわかった。(10代 女性)
・昔外国の人がステッキ代わりで持っていた写真を見たことがある。(60歳以上 男性)
・雌雄の全身骨格の比較がよい。(40代 男性)
・ワークシートの問題に答えながら観察したら色々とわかり、おもしろかったです。(40代 女性)
・ワークシートをやった人はプレゼントをつけたほうがいいと思います。(10歳未満 女性)
・あまり知られていない、イッカクに注目したところ。波の音による演出も良かった。(20代 女性)
・とても本物はみられないので、骨だけでも見ることができて良かった。今後も子どもの興味を引く展示方法で面白企画をしてがんばってください。(30代 女性)
・牙があるから!!腰の骨があることにびっくり!!もっといろんなクジラ類も展示して欲しい。(10代 女性)


 

フォトギャラリー

 
オスの頭骨
オスの頭骨

オスの全身骨格
オスの全身骨格

メスの全身骨格
メスの全身骨格

イッカクの縮小模型
イッカクの縮小模型

展示室全景
展示室全景

展示のようす

展示のようす


骨格標本の組み立て

骨格標本の組み立て





 
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