> 千葉県立中央博物館分館 海の博物館> 企画展示> 過去のマリンサイエンスギャラリー> 平成11年度マリンサイエンスギャラリー 







 
 

過去の企画展示

 

平成11年度マリンサイエンスギャラリー


沈殿物を吸い取って食べるマガキガイ

沈殿物を吸い取って食べるマガキガイ
沈殿物を吸い取って食べるマガキガイ

 貝塚や遺跡が物語るように、昔から人は貝を食材や装飾品、貨幣などに利用してきました。また、貝殻がもつ自然の造形美は、いつの時代にも人々を魅了し続けています。このように人の文化に深く根付いている貝ですが、生きものとしての貝の姿は普段あまり気にとめられていません。海の博物館では、平成11年度マリンサイエンスギャラリーとして、貝達の食生活に見られる多様さと巧みさにスポットを当て、その中から代表的なものをご紹介しました。
 

貝類とは


 私たちの多くは、“貝”と聞くと、アサリやサザエなど、食用にしている種類をまっ先に思い浮かべることでしょう。お馴染みの貝の中には、二枚の殻が合わさった二枚貝(アサリやハマグリなど)や、殻が螺旋状に巻いている巻き貝(サザエやキサゴなど)があります。一見、かなり異なった形ですが、体の構造を詳しくみてみると、二枚貝も巻き貝も外套膜(がいとうまく)という組織によって貝殻が作られ、それが体を保護していることがわかります。同じような体の構造をもった動物に、ヒザラガイなどの多板類、ツノガイなどの掘足類、イカやタコなどの頭足類などがあり、これらをあわせて軟体動物と呼んでいます。軟体動物の中には、イカ・タコ類や、巻き貝の仲間であるウミウシ類のように、進化の過程で殻をなくしてしまったものもいます。


貝の仲間たち




 

植物を食べる


展示の様子 たくさんの種類の貝たちが植物を食べています。巻貝の仲間(腹足類)では、サザエやアワビといったお馴染みの貝や、ウノアシガイやキクノハナガイなどの笠型の貝、殻を失ったアメフラシなどが藻食性です。また、ヒザラガイの仲間(多板綱)もほとんどの種類が藻食性です。
 これらの仲間は、海底に生えている植物(海藻や微少な藻類)を歯舌という摂餌器官を使って、削り取ったり、すりつぶしたりして食べています。

ウノアシガイ
ウノアシガイ
笠型の貝類の食生活

 潮が引いた磯では、笠型の殻を持つ様々な種類の貝を見ることが出来ます。これらの貝を総称して「カサガイ類」と呼びます。カサガイ類は、岩の表面に生えた微少な藻類を削り取るようにして食べています。
 また、カサガイの仲間のウノアシガイやキクノハナガイなどは、帰家行動をとることが知られています。これらの貝達は岩の表面のくぼみを自分の家にしていて、餌を食べに色々なところに出かけても再び家に帰ってくるのです。

種苗生産された クロアワビの稚貝
種苗生産された
クロアワビの稚貝
緑色の殻のアワビ

 サザエやアワビは大型の海藻を食べています。これらは食用として重要な貝で、卵から育てた稚貝を放流することが各地で行われています。
   アワビは餌とする海藻の種類によって、殻の色が変わってくることが知られています。ワカメやコンブなどの褐藻類を餌にすると緑色の殻になり、アマノリやオゴノリなどの紅藻類を与えると赤茶色になります。アワビを種苗生産するときには褐藻類を餌にすることが多いために、写真のように緑色の殻になります。
   放流されたアワビは自然の中で様々な種類の海藻を食べて成長します。そのため、新しく成長した部分の殻は褐色に近い色になりますが、放流前に出来た緑色の部分は残ります。


 

動物を食べる


展示の様子
 貝達の中には、他の動物を食べる肉食のものもたくさんいます。その多くは巻貝の仲間(腹足類)ですが、ヒザラガイの仲間(多板類)のババガセや二枚貝類のスナメガイなども肉食です。

待ち伏せをするババガセ
待ち伏せをするババガセ
待ち伏せして食べる

 ヒザラガイの仲間はほとんどが藻食ですが、ババガセはその中では珍しく肉食です。さらに、ババガセの餌の取り方は貝類全体の中でもひときわ変わっています。
   ババガセは潮間帯から潮下帯の岩の上で、体の前部を持ち上げてじっとしています。そして、岩と持ち上げた体の間に餌となる小動物が入ってくると、覆い被さって捕まえて食べてしまいます。

砂浜に打ち上げられた 穴の開いた貝殻
砂浜に打ち上げられた穴の開いた貝殻

ツメタガイ
ツメタガイ
穴をあけて食べる

 海岸に打ち上げられた貝殻を集めてみると、丸い小さな穴が開いていることがあります。これは肉食の貝に食べられてしまった貝の殻なのです。
   ツメタガイなどのタマガイ科の貝は大きな足で殻を覆い、砂に潜って生活しています。この貝は、その大きな足で二枚貝を包み込むと、酸性の物質を出して貝殻を柔らかくし、歯舌で穴をあけて中身を食べてしまいます。
   他にも、岩場に住むイボニシなどのアッキガイ科の貝も他の貝やフジツボに穴をあけて食べています。

イモガイの歯舌歯
イモガイの歯舌歯
毒矢を使って食べる

 肉食の貝の中でも、イモガイの仲間はもっとも優れたハンターだといえるでしょう。イモガイの歯舌歯は銛のような形をしており、中に毒が詰められています。アンボイナガイなど強力な毒を持つイモガイに刺されると、人でも死亡することがあります。狩りをするときには、この毒歯を獲物に打ち込み、毒で麻痺した獲物を食べてしまいます。
   イモガイの仲間は種類によって何を餌にするかが決まっていて、巻貝を食べるもの、ゴカイを食べるもの、魚を食べるものがいます。

ベッコウイモガイの魚の捕まえ方

ベッコウイモガイの魚の捕まえ方

アカヒトデヤドリニナ
アカヒトデの腕の中に寄生するアカヒトデヤドリニナ(写真は腕を切り開いたところ)
寄生する

 獲物を捕らえるのではなく、他の動物の体内や体表に寄生してしまう貝もいます。
   アカヒトデヤドリニナなどのハナゴウナ科の貝達は代表的な寄生貝で、主にヒトデやウニなどの棘皮動物に寄生しています。これらの貝は宿主の体液を吸って暮らしていて、多くは歯舌が退化してなくなっています。



 

懸濁物や沈殿物を食べる


展示の様子
 海水中には様々なプランクトンや、死んだ生物が分解される途中の有機物の塊などが懸濁物(けんだくぶつ)となって浮遊しています。海では、色々な動物がこの懸濁物を食べて生活しており、いわば栄養のあるスープの中に暮らしていると言えるでしょう。
 また、海底に堆積した有機物や微生物を食べる沈殿物食の生きものも多くいます。二枚貝ではサクラガイなどニッコウガイの仲間、巻貝ではキサゴの仲間やマガキガイ(表紙写真)などのスイショウガイの仲間などが沈殿物を食べています。


懸濁物を食べる二枚貝

 二枚貝の大部分は海水を鰓(えら)で濾過して懸濁物を集め、その中の有機物を餌にしています。1個体の二枚貝が一年間に海水を濾過する量は、アサリでは4トン以上、ムラサキイガイでは約7.3トンと推定されています。海水から多量の懸濁物を取り除く二枚貝は、海水の浄化にきわめて重要な役割を果たしています。

懸濁物を食べる二枚貝
 実験開始
実験開始
 1時間後
  1時間後
2時間後
  2時間後 
 3時間後
  3時間後
植物プランクトンをたくさん含んだ緑色の海水を水槽に入れ、右側の水槽にだけアサリを入れます。アサリが海水を濾過するので、右の水槽はしだいに透明になっていきます。

粘液の糸を出すオオヘビガイ
粘液の糸を出すオオヘビガイ 
粘液にからめて食べる

 オオヘビガイなどのムカデガイのなかまは、巻貝類としては珍しく殻を岩の表面に固着させていて、餌を取るために動き回ることが出来ません。このため、足から分泌した粘液の糸を周囲に流しておき、その糸にくっついた有機物やプランクトンを糸ごとからめ取って食べています。


 

太陽を食べる・地球を食べる


展示の様子
 ここで紹介する貝達は、私たちが想像するような「食事」はしません。そのかわりに、共生する他の生きものの力を借りて、栄養を得ています。

シラナミガイ
シラナミガイ
太陽を食べる貝

 シャコガイの仲間は、体表の細胞の間に単細胞の藻類を共生させています。この共生藻は、シャコガイ類の出す二酸化炭素や老廃物を栄養源とし、太陽の光によって光合成を行い有機物を作ります。シャコガイ類は、共生藻から栄養を得ています。

シャコガイ類と共生藻

ナギナタシロウリガイ
ナギナタシロウリガイ
(写真提供:海洋科学技術センター)
地球を食べる貝

 深海底のわき水の周りに住むシロウリガイの仲間は、体内に硫化水素を酸化する細菌を共生させています。共生細菌はシロウリガイの出す二酸化炭素とわき水の中の硫化水素などを利用して化学合成により有機物を作り出し、シロウリガイはこの有機物を栄養としています。

シロウリガイと共生細菌


 

歯舌


展示の様子
 歯舌(しぜつ)は、貝類、イカ・タコなど、軟体動物というグループに特有な摂餌器官です。歯舌は、しなやかなリボン状の膜の上に「歯」が規則正しく並んだ姿をしていて、これを前後に動かすことにより餌を削り取ります。歯舌はのどの奥で次々に新生されて、使い古された先端の部分の歯舌はどんどん切り捨てられていきます。


歯舌で食べる
 食べる様子
口の中には、歯の生えたリボンのような形の歯舌があります。
 食べる様子
軟骨と一緒に前後に歯舌を動かして、餌を削り取ります。
 食べる様子
削り取った餌を食べながら、場所を変えていきます。

 歯舌の形は非常にバリエーションに富んでおり、種類によってその形状が異なります。歯舌を観察することにより、その貝の食生活を推定したり、よく似た貝を見分けたり、さらには色々な種類の貝の間の関係を推定することが出来ます。


歯舌の電子顕微鏡写真
 クボガイ
クボガイ
岩の表面の藻類を食べる
 ハナマルユキダカラガイ
ハナマルユキダカラガイ
海藻類やカイメン類を食べる
 ホタルガイ
ホタルガイ
砂の中の貝類を食べる

 サザエ
サザエ
海藻を食べる
 ツメタガイ
ツメタガイ
貝類に穴をあけて食べる
 

テラマチオキナエビスガイ
テラマチオキナエビスガイ
カイメン類を食べる

 ヒザラガイ
ヒザラガイ
岩の表面の藻類などを食べる
 イボニシ
イボニシ
フジツボや貝類を食べる
 キヌカツギイモガイ
キヌカツギイモガイ
ゴカイ類を食べる


 

貝たちは何を食べているのかな?


 貝たちの食生活は実にバリエーションに富んでいます。下の写真の貝たちはどんな物を食べているのでしょうか? たくさんの種類の貝が様々な方法で食事をしています。


サザエ
サザエ

 食用としてお馴染みのサザエは、ワカメやコンブなどの海藻を食べています。
大型の海藻は消化しにくいので、小さい歯のたくさん並んだ歯舌を使って
細かくすりつぶして食べます。

ベッコウイモガイ
ベッコウイモガイ

 イモガイの仲間の歯舌は銛のような形をしています。
この歯舌を獲物に突き刺し、毒を注入して、弱ったところを飲み込みます。
ベッコウイモガイはハゼなどの魚を餌にしています。

ルリガイ
ルリガイ

 ルリガイは足を上にして海の表面に浮かんで生活していて、ギンカクラゲや
カツオノエボシなどのクダクラゲ類を食べています。上の写真は、上半分は
反射で映った像で、左側にいるギンカクラゲを食べているところです。

トラフケボリダカラガイ
トラフケボリダカラガイ

 トラフケボリダカラガイはヤギ類(刺胞動物)の上について、
そのポリプを食べています。

ツメタガイ
ツメタガイ

 ツメタガイは砂泥の中に潜って暮らしています。大きな軟体部で他の貝を抱き込み、歯舌で殻に穴をあけて食べてしまいます。

シラナミガイ
シラナミガイ

 シラナミガイなどのシャコガイ類には、体内に小さな藻類が共生しています。
シャコガイ類は、光合成を行って増殖する共生藻類を利用して栄養を得ています。

アラムシロガイ
アラムシロガイ

 内湾の砂泥底に住み、貝や魚などの死体に群がる腐肉食者です。

ダンベイキサゴ
ダンベイキサゴ

 砂底に住み、触角で砂の表面の堆積物を集めて食べています。
「ナガラミ」と呼ばれ、食用にされます。

ヒザラガイ
ヒザラガイ

 潮間帯の岩場でよく見かける貝です。
岩の表面に生える藻類を食べています。

キクスズメガイ
キクスズメガイ

 大きな貝の上に小さな貝がたくさん付着しています。
この小さな貝がキクスズメガイで、大型の貝の排泄物を食べています。

ウグイスガイ
ウグイスガイ

 ヤギ類(刺胞動物)の上に付着して生活する二枚貝です。
海水中の懸濁物(けんだくぶつ)をこし取って食べています。

シチクガイ
シチクガイ

 浅い海の砂底に住む、殻高3cmくらいの貝です。ギボシムシ類などを食べます。


 
Copyright © 2002 Coastal Branch of Natural History Museum and Institute, Chiba. All rights reserved.