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過去の企画展示

 

平成12年度マリンサイエンスギャラリー


稚魚の自然誌

開催期間:平成13年2月6日(火)~3月18日(日)

稚魚の自然誌

 私たち日本人は、古くから魚に慣れ親しんできました。ちまたには図鑑類に始まり、釣り方や飼い方、はては料理法や名前の由来、方言にいたるまで、魚に関するさまざまな本や雑誌が満ちあふれています。日本は、世界中で最も魚に関する文化が発達している国といってもよいでしょう。しかし、それほど身近にありながら、私たちは、魚の子供についてどのくらいのことを知っているでしょうか? 
 実は、稚魚の姿や生活の様子が分かっている種類はそれほど多くはありません。平成12年度マリンサイエンスギャラリー「稚魚の自然誌」では、これまでに明らかになった稚魚の成長による形の変化や、その生活の様子について、最新の研究成果をまじえながら紹介しました。
 

稚魚って何?


■マダイの親と子

仔魚
  仔魚(全長約4mm)
  一般に、魚の子供のことを「稚魚」と呼びます。今回のマリンサイエンスギャラリーでも、そのような意味でタイトルに使いました。しかし、専門的には、魚の子供は鰭(ひれ)の発達の程度によって、仔魚(しぎょ)と稚魚(ちぎょ)の二つに分けられます。

稚魚(全長約13mm)
  稚魚(全長約13mm)
  大半の魚は卵からうまれ、うまれた直後には背鰭(せびれ)や尾鰭(おびれ)の区別がなく、多くはオタマジャクシのような形をしています(左図上)。仔魚とは、この時期の子供のことをいいます。それぞれの鰭は、この後徐々にできていき、やがてその中に鰭条(きじょう)と呼ばれるスジが現れます。このスジの数が親と同数になった子供が稚魚です(左図中)。

親
  親(全長約80cm)
  魚の種類によっては、仔魚から稚魚にかけて、体の形が大きく変化するものがあります。たとえば、両方の目が体の片側についているヒラメやカレイの仲間は、うまれた直後には他の魚と同じように目が体の両側についています。ところが、仔魚の間に一方の目が体の反対側へと移動し、稚魚になるころには親と同じように両方の目が体の片側にある姿へと変化します(写真下)。このような現象は、「変態(へんたい)」と呼ばれています。

体の右側 
  体の右側
体の左側
  体の左側
左目が頭の上を越え、体の右側に移動しつつあるカレイの仲間
(全長約14mm)



 

稚魚は旅する


 日本の周辺には、約4千種類の魚がすんでいます。このうち、稚魚の形が知られているのは全体の1/4程度で、それらの生活の様子までわかっている種類はさらに少なくなります。
 わかっているものをいくつか紹介すると、カレイやヒラメの仲間は、目が体の両側にある時期には、海底にいるのではなく、水中を泳いでくらしています。また、沿岸の岩場でくらしているイシダイやカワハギも、稚魚の時期には、海面をただよう「流れ藻(ながれも)」のまわりでくらしています(下写真)。さらに、川にすむウナギは、はるか南の海でうまれ、稚魚の時代に黒潮にのってはるばると日本までやってきていることが最近になってわかりました。稚魚は、大きさや形だけではなく、生活そのものも親とは異なっているのです。


ウナギの仲間のレプトケファルス幼生
ウナギの仲間のレプトケファルス幼生

ウナギの仲間の稚魚は、このように細長い木の葉のような形をしています

流れ藻に付くイシダイの稚魚
流れ藻に付くイシダイの稚魚

流れ藻は体の小さい稚魚にとって、よい隠れ場所になります。

ウナギ
ウナギ

ウナギは、日本の南約3,000km、フィリピンの東方沖でレプトケファルス幼生として生まれます。稚魚は、この後、北赤道海流と黒潮に運ばれ、日本の近くにまでやってきます。写真の個体は、海の博物館の周辺で採集されました。移動の過程で、体はこのように細く、短くなります。これが川に上って、親ウナギに成長します。



 

この子はだれの子?


チョウチョウウオの仲間の稚魚
チョウチョウウオの仲間の稚魚

チョウチョウウオの仲間の稚魚は、頭の周辺の骨が板状に発達し、まるで、鎧兜を着けたような格好をしています。このような格好をしたこの仲間の稚魚は、「トリクチス幼生」と呼ばれています。

ナガダルマガレイの稚魚
ナガダルマガレイの稚魚

ヒラメやカレイの仲間も普通の魚と同じように、稚魚の時期には、目が体の両側にあります。さらに、ナガダルマガレイの稚魚では、背鰭の一部が鞭のようになっており、体よりも長く伸びています。

ウナギの仲間の稚魚
ウナギの仲間の稚魚

ウナギの仲間の稚魚は、薄い木の葉のような形をしており、「レプトセファルス幼生」と呼ばれています。レプトセファルス幼生は、ある程度まで大きくなると、今度は体が縮み始め、やがて親と同じような筒型の体へと変化します。

カタクチイワシの稚魚
カタクチイワシの稚魚

イワシの仲間の稚魚は、透明な細長い体をしており、「シラス」と呼ばれています。
食卓でおなじみの「シラス干し」は、このカタクチイワシの稚魚を茹でて干したものです。

ヤリマンボウの子供
ヤリマンボウの子供

マンボウの仲間の稚魚は、体の表面にいくつものトゲを持っています。

ホウボウの稚魚
ホウボウの稚魚

ホウボウの稚魚は、頭の周囲にいくつものトゲを持っています。

クロマグロの稚魚
クロマグロの稚魚

マグロの稚魚は大きな口をしており、この口で他の稚魚を食べ、どんどん大きくなります。

マツカサウオの稚魚
マツカサウオの稚魚

マツカサウオの稚魚も、ホウボウの稚魚と同じように、頭の周囲にいくつものトゲを持っています。

ヘダイの稚魚
ヘダイの稚魚

ヘダイの稚魚は透明な体をし、砂浜海岸などの沿岸の浅い場所で暮らしています。



 

さまざまな稚魚の姿


■ゴテンアナゴの仲間の稚魚

ゴテンアナゴの仲間のレプトケファルス幼生

ゴテンアナゴの仲間のレプトケファルス幼生

 ゴテンアナゴは全長約60cmに達するウナギ目アナゴ科の魚で、日本各地の浅い海の砂泥底に生息しています。
 ゴテンアナゴの仲間の稚魚は、他のウナギやアナゴの仲間と同様、上の写真のように木の葉のような薄い体をしています。このような形の稚魚はレプトケファルス幼生と呼ばれており、底生生活をする親とは異なり、浮遊生活をしていることが知られています。
 上の写真で、体の後ろから伸びている細い糸状のものは、腸の一部です。ゴテンアナゴの仲間のレプトケファルス幼生では、このように体から腸がはみ出してしまうものがあります。この体の外にはみ出してしまった腸のことを、外腸(がいちょう)と呼びます。他にも、カレイ目ウシノシタ科の仲間などの稚魚でも、このような外腸を持つものがあることが知られています。

〇なんでこんな形なの?

なんでこんな形なの
 薄い体は、流れに乗ってより遠くまで移動するのに役立っているのだろうと考えられています。

なんでこんな形なの?
 体の外にまで出る長い腸があると、エサの豊富なときに、より多くの餌を食べることができるのかもしれません。また、同じ量の餌から、より多くの養分を吸収できるとも考えられます。
 

■チョウチョウウオの仲間の稚魚

チョウチョウウオの仲間の稚魚

チョウチョウウオの仲間のトリクチス幼生

 チョウチョウウオの仲間の稚魚は、頭の周辺の骨が板状に発達し、まるで、鎧兜を着けたような格好をしています。このような格好をしたこの仲間の稚魚は、「トリクチス幼生」と呼ばれています。

〇なんでこんな形なの?

なんでこんな形なの?
 発達した大きな骨は、外敵から身を守るのに役立っているのかもしれません。
 

■ミツマタヤリウオの稚魚

ミツマタヤリウオの稚魚

ミツマタヤリウオの稚魚

 ミツマタヤリウオの仲間は、深海に産する種類がほとんどで、私たちにはあまりなじみがない魚です。この仲間は、北太平洋の温帯海域に広く分布し、水深約400~800m付近を遊泳しています。雌は体長50cmに達しますが、雄は5cm以下と、雌雄で体長が大きく異なります。非常に大きな口を持っており、他の魚などを丸飲みします。
 さて、ミツマタヤリウオの稚魚は、特に左右の目が長く飛び出しています。上の写真で、頭の部分から伸びている枝状の先端部のふくらんだところが目で、親の姿とはずいぶんかけ離れています。成長に伴い、この飛び出している部分は短くなっていきます。

〇なんでこんな形なの?

なんでこんな形なの?
 ミツマタヤリウオの稚魚の目が飛び出る理由については、実はまだよくわかっていません。来館者へ行ったアンケートでは、「周囲をよりよくみるため」との回答が多く、専門家の中にもこのように考えている人が少なくありません。真相はいかに?
 

■ホシセミホウボウの稚魚

ホシセミホウボウの稚魚

ホシセミホウボウの稚魚

 ホシセミホウボウはカサゴ目セミホウボウ科の仲間で、食卓に登場するいわゆるホウボウとは別の仲間です。日本近海からインド洋まで、広く分布しています。
 ホシセミホウボウの稚魚は、上の写真のように頭の部分に大きなトゲを持っていますが、親になると、目立たない程度の大きさになります。

〇なんでこんな形なの?

なんでこんな形なの?
 体が硬かったり、とげが生えていることによって、他の魚から食べられにくくなっているという考えもあります。



 

展示の様子


 マリンサイエンスギャラリーの展示の一部をご紹介します。


 展示の様子
ビデオモニタを通して、カレイの仲間の稚魚の目が移動する過程を紹介しました。
 展示の様子
  いろいろな稚魚について、写真、
標本とともにパネルで
解説しました。
展示の様子
  稚魚を顕微鏡で拡大して観察。 

 展示の様子
ウナギの稚魚、シラスウナギの
生きている姿を水槽にて
紹介しました。
 展示の様子
ヒラメの稚魚が卵からふ化し、
成長していく様子を紹介しました。
写真はふ化20日の個体です。
展示の様子
 稚魚の研究に使用する道具や、
調査方法などをパネルで
紹介しました。



 
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