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過去の企画展示

 

平成13年度マリンサイエンスギャラリー


クジラを知る

開催期間:平成14年2月26日(火)~4月7日(日)

クジラを知る

 皆さんは、博物館で大きな骨格標本を見た時、最初に何をイメージしますか? 恐竜、それともクジラ? 恐竜は太古に生息していたは虫類の仲間で、絶滅した動物群です。クジラは今でも海の中に暮らしている地球上で最大の動物です。そのクジラが魚ではなく、私たち人間と同じほ乳類の仲間であること知っていますか? 外観上、クジラは人をはじめ、イヌやネコなどの陸で暮らすほ乳類とは、随分と違った体をしています。 陸から海に生活の場を移し、水中での生活に適応した体は、陸で生活する他のほ乳類とはどこが違うのでしょうか?
 平成13年度マリンサイエンスギャラリー「クジラを知る」では、海の中で生活するクジラ類の体の形や機能を解りやすく解説し、房総半島周辺の海にも普通に生活している生きものであることを紹介しました。
 

ほ乳類の仲間


■ほ乳類ってどんな生きもの?
  体の中に背骨がある動物をひとまとめにして脊椎動物といいます。ほ乳類はその中の大きなグループ(綱)の一つで、21の小グループ(目)に分けられ、世界中に約4400種類がいます。このうち、日本には、10の小グループ、145種類のほ乳類が知られています。
 ほ乳類には、首の骨が7個であることや、母乳で子供を育てること、体に毛があることなどいくつかの特徴があります。 
 展示室

 

■クジラもほ乳類

  水の中で生活するクジラ類は脚や尾はなく、代わりにヒレがあり、姿だけを見るとむしろ魚類に似た体つきをしています。しかし、ほ乳類の特徴を一つ一つ照らし合わせてみると、クジラ類が魚類ではなく、ほ乳類の仲間であることがわかります。
 展示室
首の骨は7個

 イチョウハクジラの首の骨は、前の4つがくっついて1つに見えますが、全部で7個の骨があります。
 首の骨

■母乳で育てる

 クジラの乳首は、母クジラのお腹の後方に、左右一つずつあります。


■クジラも獣(けもの)?

 クジラの皮膚はツルツルしているように見えますが、全く体毛がないわけではなく、口のまわりには短い毛が生えています。

クジラ



 

陸から海へ


 クジラ類の祖先は、4本の脚を持ち陸上で暮らしていました。長い歴史の中でしだいに姿を変えていき、水の中で暮らすようになったと考えられています。
 ここでは、水の中での暮らしに適したクジラの体の特徴について紹介します。

■泳ぐために

泳ぐために

海の中を自在に泳ぎながら生活するためには、水の抵抗を少なくする必要があります。このため、クジラ類では、脚や毛、鼻、耳は、形が変化したり、なくなったりして、陸上のほ乳類とはずいぶん違った形をしています。


 鼻で息をする

 クジラは、泳ぎながら水面で呼吸をするために、鼻が頭の上にあります。これは、長い歴史の中でしだいに鼻先から頭の上へと移動したもので、テレスコーピングといいます。
 鼻で息をする

 
ヒレになった前脚(まえあし)

 
クジラ類は水の中で暮らすようになり、脚で体を支える必要がなくなりました。その結果、クジラの前脚は泳ぐために役立つ胸ビレへと変わりました。骨をみると、クジラの胸ビレの中にも、私たちの手と同じように5本の指があることがわかります。

 人の手のエックス線写真
   人の手のエックス線写真
イチョウハクジラの胸ビレ
   イチョウハクジラの胸ビレ 

 なくなった後脚(うしろあし)

 クジラ類の後脚は、体を支える必要がない水中では、長い年月の間にしだいに短くなっていき、やがてなくなりました。しかし、そのなごりは、今もクジラ類の体の中にみることができます。
 クジラには、脚を使わなくなったために小さくなった骨盤が、腰骨という小さな骨として残っていると考えられています。また、初期の胎児には後脚があることがわかっています。
 なくなった後脚

 尾は尾ビレに

 クジラ類の尾ビレは、尾の皮膚が変化したものです。水中での尾ビレは、泳いだり、体温を調節するために使われています。
 尾は尾ビレに

 
■泳いでみたら

 軽くてもろい骨

 陸上では、体を支えるために丈夫な骨が必要ですが、水の中へと入ったクジラ類には、代わりに水に浮かぶ軽い体が必要になりました。その結果、クジラ類は、外側の堅い部分が薄く、ほとんどが穴だらけのもろい部分でできている骨になりました。
 軽くてもろい骨

 大きな赤ちゃん

 クジラ類は、母体の1/2から1/3もある大きな子供を産みます。それは、子供を抱いて暖めてやることができないため、子供は、体が少しでも大きい方が冷たい水の中でも自力で体温を保てるからです。また、水中で暮らすようになったクジラ類には骨盤がなくなり、産道が大きく広がるようになったため、大きな子供を産めるようになりました。
 大きな赤ちゃん

 
■ヒゲと歯

口の中のヒゲ

 ヒゲクジラの仲間には、歯がないかわりに、上あごの内側に、たくさんのヒゲがあります。このヒゲは、歯が変化したものでも、体毛でもありません。
 これは、ヒゲクジラの仲間にだけある特別な器官です。ヒゲは、皮膚が爪のような板になり、その先が細長く何本にも分かれたものです。この板をヒゲ板といい、ヒゲ板の枚数や形は、クジラの種類によって異なります。
 口の中では、ヒゲ板が並び、細長い房毛が互いに重なってザルのようになっています。このヒゲ板を使って餌をこし取って食べます。その取り方は、次の三つの方法に分けることができます。
 ミンククジラのヒゲ板
   ミンククジラのヒゲ板

ミンククジラの頭骨
   ミンククジラの頭骨

一口で

 一つめは、餌とともに大量の海水を口にふくみ、ヒゲ板の間から海水だけを吐き出す方法です。シロナガスクジラやミンククジラ、ザトウクジラなど、ヒゲクジラの仲間の多くが、この方法で餌をこし取ります。
 この方法は、一度に大量の海水を口にふくむため、のどもとからへそにかけて延び縮みする畝(うね)と呼ばれるヒダがペリカンの口のようにふくらみます。一口の海水の量は、体長約12mのザトウクジラの場合で、約55トンにもなります。
 一口で

 泥ごと

 二つめは、口で海底の泥や砂を吸い込んで、ヒゲ板の間から海水と泥や砂だけを出し、餌をこし取る方法です。漁師さんがカゴのついた熊手で砂の中の貝を取るのに似ています。この方法で餌をこし取るのは、コククジラだけです。
   コククジラのヒゲ板は、幅が狭くて厚く、房毛も1本1本が太く丈夫にできています。そして、なぜだかわかりませんが、餌を泥ごと吸い込むのは、必ず口の右側です。しかし、左右のヒゲ板には差がなく、泥や砂は両方から吐き出します。
 泥ごと

餌だけ

 三つめは、口を開けたままでゆっくりと泳ぎ、中に入った水がヒゲ板の間を通り過ぎて外に出ていく際、細長い房毛で小さな餌をこし取る方法です。ちょうど、私たちがタモ網で魚を取るようなもので、セミクジラやホッキョククジラがこの方法で餌をこし取ります。
   この方法を使うセミクジラの仲間は、水をこす面積を大きくするために、体の長さの1/3もある大きな口と、下あごにまでとどく長くて弾力性があるヒゲ板を持っています。  
 餌だけ

ハクジラの歯

ハクジラの歯
 ハクジラの仲間は、人間と違い、同じような形をした歯しかありません。この形は種類によって異なり、また死ぬまで生え替わることがありません。
 ハクジラの歯の数は、上下合わせて200本以上あるものから下あごに2本のものまで、種類によってさまざまです。歯の数は、餌の取り方と関係しており、数が多い種類は、かみついて餌を捕まえるのに対し、数が少ない種類は、歯を使わず、吸い込むようにして餌を捕まえます。
 イチョウハクジラの歯
   イチョウハクジラの歯


 

房総のクジラ


 房総半島の周辺からは、日本で見られる38種類のクジラ類のうち31種類が見つかっており、国内でも有数のクジラ類の生息地といえます。ここでは、そのうちの13種類について、識別点などを紹介します。

クジラの識別点


クジラの識別点


クジラの識別点


クジラの識別点


クジラの識別点


クジラの識別点


クジラの識別点

■力つきて
 まれに、海岸にクジラ類が打ち上げられていることがあります。それらは、生きたままのこともありますが、多くの場合は、寿命を全うしたか、何らかの原因で死んだ死体の漂着です。
 調査や研究が目的であっても、生きたクジラを捕まえたり、殺したりすることは規制されています。このため、海岸に漂着した死体は、貴重な研究材料となり、可能な限り学術的な調査が行われます。 

力つきたクジラ


 

謝辞


 今回のマリンサイエンスギャラリーでは、海の中での生活に適応したクジラ類の体や、房総半島近海に暮らすクジラ類を紹介しました。開催にあたっては、以下の方々と機関に様々なご協力とご指導をいただきました。心よりお礼申し上げます。

神谷 敏郎、加藤 秀弘、加藤 仁、国府田 良樹、藤田 健一郎、宮内 幸雄、山田 格、中村 宏治、宮崎 信之、渡辺 芳美、木和田 正三

(財)日本鯨類研究所、国立科学博物館、東京大学総合研究博物館、銚子海洋研究所、小笠原海洋開発(株)、鴨川シーワールド、日本水中映像株式会社、波左間海中公園、千葉県立安房博物館、共同船舶株式会社、千葉県農林水産部水産課、茨城県自然博物館、フルタ製菓株式会社、(社)関東海事広報協会、(財)日本海事広報協会、日本財団、東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター、独立行政法人水産総合研究センター遠洋水産研究所
(五十音順、敬称略)


 
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