千葉県立関宿城博物館

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陸地は地形や地質によって植生(しょくせい)が決まり、その植物に共生する形で、主に昆虫類(こんちゅうるい)が定着します。川をはさんで両側にある堤防(ていぼう)と堤防の間の土地である河川敷は、増水(ぞうすい)時には川幅(はば)が広がり、川の両側の地面も水をかぶってしまいます。そのため、同一環境で優占種(ゆうせんしゅ)の植物から競争排除(きょうそうはいじょ)され、地中に埋まっていた種(たね)の発芽(はつが)などで、植生の変化(かく乱(らん))が起こります。何年何十年かに一度起こるこの自然かく乱のため、河川敷に生息(せいそく)する生き物の中には、他では見ることの少ないものもあります。 このパネル展では、河川敷の環境(かんきょう)を6つに分け、その地域に特有の植物や昆虫を中心に写真パネルで紹介しています。

  
   
 1乾燥地(かんそうち)等の環境 
  
監修 岩槻秀明 

乾燥地等の環境は江戸川流頭部(えどがわりゅうとうぶ)で最も広がっており、通常は乾(かわ)いた土地ですが、川の増水(ぞうすい)によって水没(すいぼつ)して土が流されたり、かく乱(らん)が激(はげ)しい環境です。 主となる植生はオギ・ヨシ・ヨモギと、それに絡まるガガイモなどですが、ホソバイラクサ、ノカラマツなどの希少種も見られます。昆虫では、ギンイチモンジセセリやミヤマチャバネセセリなどの蝶、ジュウサンボシテントウなど珍しい種類も多く、ウスイロササキリ・クビキリギスなどのキリギリス類などもたくさん見られます。

おぎ・よし ホソバイラクサジュウサンボシテントウ
オギ・ヨシ混生
ホソバイラクサ 
ジュウサンボシテントウ

 
2河畔林(かはんりん)の環境

 

 

 河畔林の環境は河川敷の所々(ところどころ)に広がっており、地形・地質は乾燥地等の環境に近いです。水の吸(す)い上げの良いヤナギ類やオニグルミを中心とした高い樹木(じゅもく)植生と、木の下にはカサスゲやウマスゲなどのスゲ類、ハナムグラ、タカアザミなどの植物やコムラサキ、サトキマダラヒカゲなどの蝶(ちょう)、カメノコテントウ、ハグロトンボ、オオスズメバチなどの昆虫が見られます。

河畔林カワヤナギコムラサキ

 河畔林の風景

 カワヤナギ

 コムラサキ


3クコ・ノイバラ群落(ぐんらく)の環境
 
 
クコ・ノイバラは3メートル以下の低い樹木植生で、これらが群生する環境も河川敷を代表しています。「乾燥地等の環境」「河畔林の環境」の外郭(がいかく)を囲(かこ)うように広がることが多いため、上記の環境と共通(きょうつう)する部分も多いです。
 クコ、ノイバラ、クズ、ヘクソカズラ、ヨシなどが見られます。昆虫はノイバラやクズなどの花に寄ってくるウラナミシジミやコアオハナムグリ、クコの葉を食べるトホシクビボソハムシ、ニジュウヤホシテントウなどが見られます。

 ノイバラクココアオハナムグリ
 ノイバラ群生 クコ コアオハナムグリ

 4湿地(しっち)の環境
 
  
河川敷の湿地は水が引きにくい地質で水際(みずぎわ)に多く、窪(くぼ)地には水たまりが残り、そこにはとり残された魚や水生生物を見ることもあります。水際で自然かく乱が頻発(ひんぱつ)するため、植物の種類が多いものの、年によって消長(しょうちょう)(勢(いきお)いが衰(おとろ)えたり盛(さか)んになったりすること)が大きいことが特徴(とくちょう)です。  タデ類やカサスゲが代表的な植生ですが、タネツケバナやミコシガヤ、ミゾコウジュ、タコノアシ、コイヌガラシ、サデクサ、カンエンガヤツリ、コギシギシなど多くの植生が見られます。またゲンゴロウ類やアメンボなどの水生(すいせい)昆虫やアジアイトトンボ、ノシメトンボなどのトンボ類が見られます。 

 タコノアシ ミコシガヤ コシマゲンゴロウ
 タコノアシ ミコシガヤコシマゲンゴロウ 

 5外来種(がいらいしゅ)植生の環境

  
外来種植物の植生は地質的には乾燥地等の環境に近く、人工的につくられた道路沿(ぞ)いなどに多く見られます。外来種植生は生物多様性(せいぶつたようせい)がなく、強いものが残っている環境です。 セイタカアワダチソウやオオブタクサに加えて国が指定した特定外来生物であるアレチウリの繁茂(はびこること)も目立ちます。昆虫はショウリョウバッタやヒメアカタテハ、ナナホシテントウ、ヨモギハムシ、マルカメムシなどが見られます。 

 オオブタクサ アレチウリショウリョウバッタ 
 オオブタクサアレチウリ群生  ショウリョウバッタ

  6自然裸地(しぜんらち)・砂地・中州(なかす)の環境 

 自然裸地(土がむき出しになっているところ)や砂地のある流頭部や川の中に存在する中州は、河川敷の基本要素(きほんようそ)です。ここからは砂鉄(さてつ)や軽石(かるいし)もとれます。河川敷の中で最も増水や崩落(ほうらく)、乾燥などの変化が激(はげ)しく、環境が不安定です。  ツルヨシやテンツキ類、カワヂシャ、タネツケバナ類などの植生が見られます。昆虫は、クルマバッタモドキやトノサマバッタなどさまざまなバッタ類やエリザハンミョウなどのハンミョウ類も見られます。また中州では、タイワンシジミやドブガイなども生息しています。

ツルヨシ クルマバッタモドキ タイワンシジミ
 ツルヨ クルマバッタモドキタイワンシジミ 

 7その他
 
  
河川敷は、その地形・地質によって大きくこれらの6つの環境に分けられます。それぞれの環境に特有の生き物以外に、それぞれの環境で、河川敷特有ではないけれども多く生息する生き物や、河川敷以外でも生息する生き物もいます。また人工的に造(つく)られた堤防(ていぼう)は、日本在来のタンポポが生える貴重な草地となっており、堤防も一つの環境といえます。そして鳥類やほ乳類は、河川敷全体を生息地としています。ここでは、河川敷全体を生息地とするセグロカモメと堤防に特有の植物、外来種植生のうち、河川敷特有ではないけれども多く見られる植物を紹介します。

セグロカモメ イタチハギコメツブツメクサ 
セグロカモメ(河川敷全体) イタチハギ(堤防) コメツブツメクサ(河川敷に多いが河川敷以外でも見られる)